老いのひとこと

一人住まいをされるお向かいの堀さんとは時折ほんの偶にではあるが立ち話を交す。

小躯ながらも脚力や聴力は元より的確な判断力を伴う脳力の持主でとてもじゃないが95歳とは思いも寄らぬ怪物で居られる。

此の堀さんから達ての願い事が在るのだと或ることを依頼された。

堀家の家の周りにある埋め立てゴミの処理方を頼まれたのです。

大変な老い耄れだが男として見込まれた以上引き下がる訳には行くまい。

 

ところが何分ゴミ処理は家内に任せ切りで皆目要領を得ない。

早速、市配布の冊子を開くが此れが又よく分からない、ややこしく解り辛い。

市役所へ電話したり町会長に尋ねたりし漸く少しばかり要領を心得た。

先ずは「埋め立てゴミ」と「金属ゴミ」と「燃えるゴミ」に大別し、大きな丸太ん棒4本は「埋め立てゴミ」として紐で結わえ45Lゴミ袋を目立つようにぶら下げる。

2個の漬物石は45L袋に入れるらしいが其の根拠は何処に在るのか市のゴミ行政は理解に苦しむ。

アルミ製大脚立と2m未満のスチール製金棒並びに錆びた高枝切り等は紐で結んでゴミ袋を付けずにそのまま出す。

木くずやプラスチック容器は「燃えるゴミ」として別扱いにする。

分別は簡単そうに見えるが其処に至るには相当の脳作業を要したわけだ。

ご近所のお世話を焼くことが辛うじて適えられて気分は満更でもない。