老いのひとこと

寒波は峠を越したようだが昨夜来の降雪が悪路となり交通の妨げとなる。

立往生を来たすほどでも無かったが昨日につづき今日も大型除雪機が路面の雪を地響きをたて豪快に掻っ攫う。

招かざる置き土産さえなければ有り難いことには違いない。

今回は雪道の難所T字路にも手を加えて堀家のコーナーは綺麗に片付き次は我が家のコーナーかと注視するが大型重機は背を向けたまま立去らんとする。

咄嗟にわたしは身の危険を顧みず重機に近付き大声で怒鳴りつけた。 

拙者は町会費も住民税も払って居るのに何故片手落ちな贔屓をするのかと怒声を張り上げた。

ガキの頃のあだ名キンタ(タンキ)の性分は今なお健在だった、ハンドルを握る眼光鋭きお兄さんが高い車台から今にも飛び降りて胸倉を捻り上げられはしないかと再び身の危険を感じたが「後で遣る段取りだ」と大声で叫んで立ち去った。

 

小雨の中暫し待機すればやがて立ち現われた重機のドライバーは我が家のコーナーの残雪を処理して呉れた。

わたしは雨の中帽子を脱いで頭を下げて礼節を尽くした。意が通じたのか運転なされるお方も窓を開け屈託ない笑みを湛え手を振って応じて呉れたのです。

前非を悔悟する当方の意中を見事に察して呉れたようで気持ちが好かった、心から安堵したし同時に猛省もしたのです。