下手糞老いぼれ剣士のルーツ《13》

たかが足軽分際で我が家の家系なんて言っても実におこがましい限りではあるが、そこは何と言おうか、やはり其処には士分の一分を守り通すための涙ぐましき悲話が秘められているはずだと推察はする。
でも推察の域は出ない。なぜならば、その間の記録はない。作り話を創ってもしようがない。
一族郎党を束ねた家長の仕来たりがあった以上高橋精路政之丞の労苦の一つ一つが甦って来る。

それに引き換え、末代のこんにちの高橋家の存在やいかに・・・






しかし、此処で決して水を差す論点からではなく至ってシビアにしてドライな視点で観察して見れば、松井治吉の娘松井信子までは明らかに血縁関係を見出せるが、少なくとも松井彰氏との間柄には寸分の間隙を認めざるを得ないのである。
実を申せばこの事を、わたしの一族にも開陳してはいない。従って松井家への表敬訪問すら未だに為してはいない。私見ながら、懇ろにして濃密なものではなく、淡白なる儀礼的挨拶に留め置いてもよいのはなかろうかと思うのである。
逆説的に申せば、仮に松井茂右衛門の直系血族として松井彰氏までの血統が滞りなく連綿と結合していたとすれば、両家の連携が深まり親密さを高めざるを得なくなるわけだ。
多分何とも言えぬほど、浅薄にして非礼なる一方的見解であるとのご批判あるいは異論や反論等が百出しましょうが、その折は忌憚なく申し出ていただきたい。