下手糞老いぼれ剣士の独り言(その2)

剣道は、「礼に始まり礼に終わる」というのだが



5 剣道では大きな声を出さないと相手の人に失礼(しつれい)になります。無礼(ぶれい)なことになります。
  失礼とか無礼というのは礼儀(れいぎ)を失(しっ)する、礼知らず者ということです。相手の人を敬(うやま)う気持ちがないということなのです。人として恥ずかしいということなのです。
  礼(れい)という字は昔は禮(れい)と書きました。つまり豊(ゆた)かさを示(しめ)すという意味(いみ)です。
  大きな声・豊(ゆた)かな声量(せいりょう)を示(しめ)さなかったら相手に失礼なのです。相手を敬う気持ちの量が豊かではないので、大きな声が出ないということになりはしませんか。
6 ここでいう相手の人は、お父さんお母さんであり、学校の先生方であり、道路(みち)で出会った見ず知らずの通りすがりの人でもよいのです。
  おはよう(おはようございます)、こんにちはと大きな声でご挨拶(あいさつ)をすることなのです。この時は大きな声でなくてよいかもしれません。
ご挨拶を全然(ぜんぜん)しないということは、やはり少しだけ失礼なことになりはしないでしょうか。
 剣道をやる以上(いじょう)お面(めん)やお小手(こて)を上手(じょうず)に打てるようになることはもちろん大事(だいじ)ですが礼儀をわきまえ、それがいつの間(ま)にか終(しまい)には見ず知らずの人に対してもちゃんとご挨拶(あいさつ)ができるようになればこれほど素晴(すば)らしいことはない。
 日本の国が住(す)みよいよい国になりはしないでしょうか。そう思いませんでしょうか。
7 礼をしてご挨拶するのは人間にだけではない。剣道場にもちゃんとご挨拶すべきです。
 軽(かる)く一礼(いちれい)するだけでよいのです。「よろしくお願いします」という気持ちを剣道場に対して示すことの出来る子は立派なのです。
 稽古(けいこ)が終われば道場(どうじょう)に向かってありがとうございましたと感謝(かんしゃ)の気持ちを素直(すなお)にあらわすことの出来る子は見上(みあ)げたものです。
 剣道がへたくそでいつも試合で負けでばっかりでもいいのです。構(かま)わないのです。      それよりも、物言(ものい)わぬ道場に感謝の気持ちを持つことのほうがずっと大事なのです。
8 また、剣道は一人では出来ません。必ず相手がいます。この相手は自分の敵(てき)だと思ってはいけません。確(たし)かに試合の時にはどうしてもそのようになるかもしれませんが、別に真剣を振りかざして殺(ころ)し合いをするのではないので、試合の相手は自分の力量(りきりょう)を測(はか)ってくれる検査官(けんさかん)のような人だと思えばよい。なかなか難(むずか)しいことかも知れませんが・・・
9 切り返しや基本(きほん)打(う)ちの相手に対し、その都度(つど)その都度大きな声で「お願いします」と立会(たちあ)いの挨拶をすべきです。
  「お願いします」の言葉の裏(うら)には、相手の人に対し今から私は思い切ってあなたの面を打ちます。痛い思いさせますけどどうぞよろしくお願いしますの意味合(いみあ)いがこめられているのです。あなたに痛い思いをさせて私は面打ちができるようになりました。面打ちが上達しました。
あなたのお陰(かげ)です。どうもありがとうございました。
 稽古が終わったら、その都度その都度ハチキレンばかりの大声で「あいがとうございました」と感謝の気持ちを相手に伝えるのです。感謝(かんしゃ)の気持ちが沢山(たくさん)あって豊かであることを示すのです。
  大きな声は声の量が豊かであることを相手に示す禮(れい)儀(ぎ)正(ただ)しいことなのです。小さなか細(ぼそ)い消え入るような声では相手に失礼なのです。
何にも言わないなんてもっての外、剣道をする資格(しかく)がないとまで断言(だんげん)できるのです。