老いぼれへぼ剣士の独り言

 高橋川と金沢工大キャンパス敷地沿いに散歩道がある。
いろんな樹木が生い茂り小鳥の囀りと共に絶好の憩いの場である。
取り分け桜の時節には延々と続く桜並木が圧巻だ。
 川沿いの桜たちと競演するが如き、とある一角には花吹雪の舞う見事なるトンネルが出現するのです。
 愛犬と共にそぞろ歩く、なによりもお気に入りの箇所であった。

 ところが数日前のある日、何とも無残なる光景を目の当たりにしてしまうのです。
 樹齢数十年と思しき巨大なる老木を根元よりチエンソーにて伐採してあるではないか。
 ことごとく全てを切り倒したのはない。幾本かは残して間伐したのだ。
何と言えども、これが最高学府の為すことなのか。
地球温暖化が喧伝されCO2問題とか地球環境保全問題で煮え返る中何ゆえ以って斯くも無慈悲なる挙に出てしまったのか腸が煮え繰り返った次第なのだ。
 私大の私有地ゆえ学舎増築も大いに在ろう事と辺りをつぶさに観察してみたが一向にその気配はない。
 理事長さんが最終決断を下し認可の捺印を如何なる心算で為されたものかいろいろ考えあぐんだ。
 でも、所詮は他人様の私有地なのだから、とやかく詮索するする必要もなかろう。そのように結論付けていた。

たまたま、今朝この地に差し掛かった折に行き交う人にお声を掛けて見たら、意外な言葉が返ってきたのです。
 そのお方も不審に思いつつあちこち尋ねて見るに、意外な事実があったのだと得々と語られた。
 工大キャンパス敷地に隣接する高級住宅街にて立て続けに乗用車破損の被害届が出されていたのだという。
 選りすぐったように一様に高級車が鋭利な凶器で一撃されていたのだ言う。
地域の住民は、この苛立つ思いを工大へぶつけてしまったらしい。
何ら確証もないまま、モンスターたちが徒党を組んで理事長室へ押しかけたのでしょう。
 窮余の一策として、これまた止むを得ない出来事だったのでしょう。
鬱蒼と生い茂る樹木が匪賊にとって格好の隠れ場所と指摘され大学側が屈服したのだろう。
何とも哀れなるお話です。
笑い話では済まされない悲しいお話です。
実に後味が悪い。
やり切れない重い重い思いが圧し掛かってくるだけのお話なのです。