老いぼれへぼ剣士の独り言

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先日のことである。いつものように、ふれあいにて桐田氏と共に法定の形を打った。
四本目の長短一味を演ずる途中でちょっとしたハプニングがあった。
形通りに挙動が進み、左足切に来るのを左足留し、更に右足切に対し右足留し、互いに相霞(カスミ)の体勢になった。
その折のことなのである。本来なら、両者は相霞のまま左ひとえ身で左右と間合いを接近させる動作に入る。
処が、打太刀は突如として体を左に躱しつつ上段より真向に打ち込む体勢を見せて来た。
突然の変化に、わたしは体を右へ躱しつつ打太刀の咽頭部を剣先で直撃する寸前に思い止まった。
瞬時にして、わたしは冨永半次郎が語ったという、“敵にやられる先に相手の命を狙え”が脳裏を翳めたのでした。
当然のことながら、上段から振り下ろす剣よりも至近距離からの突き技の方が優位に違いない。
瞬間、桐田氏が乱心に及んだと勘ぐるほど臨場感溢れる真実味を帯びていた。
これは、桐田氏による極めて優れた演出であった。
氏曰く、嘗て大森曹玄禅師が時折このような素振を為されたのだという。
時に臨み、臨機応変に身を処す事の重大性を身を以って教えられたのだという。
成程と思った。
益々以って法定の形の持つ深遠なる理合いに感服したのでした。