天からの贈り物
言い古された言い種ではあるが、実に憤慨遣る方なしだ。
春到来と共に道端の残雪溶けて、にょっきり顔出すフキノトウならいざ知らず、なんと犬の糞!
クソー!クソンタレー!
あちらにもこちらにも、もう足の踏み場もない。
あわれだ。はずかしい。なげかわしい。
テメーサンの面みたいよ。
311大震災のパニックの最中、日本人の沈着冷静な行動と判断力に全世界より賞賛の賛辞を戴いたばかりではないか。
日本人の公徳心の高さに絶賛を浴びたはずではありませんか。
あれは見せ掛けだけの似非日本人の姿だったのか。
欺瞞に満ち溢れた世相に在って、東北人気質が世界に誇れる勲章となり、すごい清涼剤として発信したはずなのに、此の有り様には幻滅だ。
至極残念でたまらない。
いや、そうではありません。
あの残雪に散らばる糞害は此処文化都市金沢の一角、それも極々狭きわたしの居住する一地域に限ることと致しましょう。
何故ならば、わたしの徒歩での行動範囲はそんなに広くはない。
従って、わたしの居住地以外の道端には憤慨すべき異物は転がっているとは思ってはいけない事にいたしましょう。
決して、そう思わないように努めねばならない。
文化都市の名に恥じない良識あるマナーの持ち主ばかりだと信じなくてはいけないのです。
犬も食わない、このような何の足しにもならないお話はわたくしの住む此処だけのお話にしなくてはならない。
むかし、ドサンコの大地で馬糞風が吹いたという。
やがて、こちらでは春一番と共にそれらしきものが舞い上がることでしょう。