うらなりの記《71》

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 当家の守り刀として『友重』のことは実弟鉄二、義母ミサオ、実父忠勝、そして実母としまではわたしの記憶に残る。
 『友重』は、わが家の古人たちの野辺送りをしかと見届けてくれた。
浄土真宗には、この守り刀の風習は無縁だと聞くが当家では、『友重』に守ってもらうことを常にしている。
当然ながら、おのれの時もそうあるべしと信じている。
欲の皮の突っ張った此のわたしは、二本携えて参ろうと企んでいる。
ドライアイス無き往時には、遺体腐食し死臭を放ったことだろう。
近寄る猫やネズミを嫌って、守り刀の光沢で魔除けとしたのだという。
また、丁子油の芳香で腐敗臭をやわらげたことでもあろう。
 
その七 友重(4)
 
 高橋家の血統で繋がる一族の護り刀として、今後とも末長く未来永劫にその役目を果たしてもらわねばならぬ当家の宝刀なるが故にである。
 社会現象として定着した核家族化が著しい現今なればこそ、なおのこと一族の精神的バックボーンの一つとして存在して然るべきと確信するのである。