老いぼれへぼ剣士の夕雲考《75》

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夕雲流剣術書         小出切一雲 誌(1)
 
 殊の外寒かったことしの冬にも春の日差しがふりそそぎ色鮮やかな季節を迎えた。
 そして、今まさに桜花満開。
 のどかな光景にさそわれて、一つ手漕ぎの屋形船 ( やかたぶね )にて漫遊 ( まんゆう )の旅にでも出てみませんか。
 江戸時代のむかしに、前代未聞 ( ぜんだいみもん )の風変わりなお侍さんが二人いた。
 針谷夕雲と小出切一雲の両人です。
人と ( き )り合うことを ( むね )とした時代に、人を斬ることを殺し合うことを避けて『相抜け』という技を編みだしそれを見事実践してみせた。
 
 ゆっくりゆっくり移りゆく四方八方に目を ( こ )らし、一つ一つの場面を小さく刻み、小間斬 ( こまき )りにして ( か ) ( くだ )き噛み締め、小児向きの咀嚼 ( そしゃく )し易き文体に書き改めました。
 まるで、マイマイつぶり(舞舞螺)のようにカタツムリのように鈍麻 ( どんま )でじれったい手漕 ( てこ )ぎの小舟は一向に前へ進もうとはしないのです。
お許しください。