うらなりの記《81》

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高橋家次男=鉄二家の人たち(3)
 
ところが、事もあろうに鉄二は国立大学一期校の入学許可証を辞退してしまった。自らの英断であった。
その理由たるや長男たる私への学資送金の上に更なる金銭的負担を、わが父親に強いることを自ら憂慮して身を引いてくれた訳なのだ。
兄貴の為というよりわが家の事情を慮っての決断であったろう。
引き裂かれる断腸の想いをさせてしまった。
ことろが何事もなかったかのように、平然として構えていた。
若輩時においても、わが鉄二は太っ腹な男であった。
とにかく、心憎いばかりに実に善くできた奴であった。
今日的教育観からすれば、誠に信じ難き決断をなしたこととなる。
私からすれば取り返しの付かないないことを弟鉄二に対して仕出かしてしまっていた。   
今更のように痛恨の念に居た堪らないのである。