老いぼれへぼ教師の回想記《89》

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企業見学レポート=その9
 
4 新日鉄名古屋製鉄所(2)
 
 次いで第一高炉と全連続式熱間圧延機(ホットストリップミル)の工場見学に至る。
 工場内での異常高温を配慮され、差し向けの作業衣をもろ肌に着込み、ヘルメットに手袋着用と云う物物しい出で立ちであった。
 プロセスコンピューターの導入によって、働く人間の姿が巨大な工場の中では、余りにも小さ過ぎはしないだろうか。
 皮膚をも焦がさんばかりの熱気と耳を劈く轟音の中、日本経済の威力を肌で感じ取った。
 午後は、省エネ対策に自主管理、原価管理や衛生管理と盛り沢山のスケジュールで埋められた。
 取り分け、J・K活動(Jishu Kanri)に注目したい。
 当名古屋製鉄所では、これをT・A・C(Total Activity for Creation=創造のための総合活動)と明らかに君津製鉄所J・Kに対抗してのことだろう。
 その源流を辿れば、1960年代にアメリカ合衆国より導入されたQ・CとかZ・Dが日本流に吸収消化されQ・Cサークル活動とかZ・D運動と名付けられ、何時しかこの両者が一体化しJ・K活動と相成ったのだという。
 数人からなるグループ(準フォーマルグループ)が各々テーマを設定し分析し、具体的解決策を考案し、それらを相互に発表し合う。
 そのテーマの内訳は作業方法の改善策とか原価低減策とか安全対策、更には品質向上策等々多岐にわたる。
 その帰着するところは、一つに働き甲斐のある職場づくりにあるのだという。
 即ち、常に問題意識を持ち、人間としての成長をお互いに啓発し合う中で見出そうという運動は、延いては確かに個々人を活性化し、集団をも活性化し自ずと企業自体も活性化することになろう。
 推計の域を出ないが鉄鋼業界の年間売上高約十兆円の内、0.4%~0.5%の400億~500億圓に及ぶ経済的効果を試算している。
 しかし、極めて現実的な見方をするとすれば、高校教育を受けた者が単純労働に駆り立てられれば、離職率を高める結果に陥ることが懸念されよう。
 従って、この歯止めのための苦肉の策だと云えば云い過ぎだろうか。