日本剣道形稽古心得覚書
太刀の部3本目=その1
三本目では、間合いに接するや相中段から打太刀は刃を右斜め下に向けつつ仕太刀の水月を突く。
仕太刀はそれを刃先右下にして入れ突きに萎 ( な )やし、すぐさま刃を真下にして打太刀の胸部へ突き返す。
この“入れ突きに萎(な)やす”という、微妙な表現の日本語が好きだ。
確かに体 ( たい )は大きく退くには退くが決して只一方的にさがるのはない。
打太刀の突きの剣勢を余裕をもって手元に引き込んで身 ( み )を余す。
この際には、前へ出て突き返す攻めの気勢が内面に秘められていることが必須要件となろう。
攻めながら下がる、下がりながら攻めるという二律背反する事柄を心情的に表現し、演武の際には傍 ( はた )目 ( め )に納得させねばならない。
やはり、至難の技と云えまいか。