老いぼれの犬日記《6》

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6 リードするかリードされるか
 
 この犬は散歩が大好きで、それとなく気付くや前足を掲げてせびる格好を表現した。
 わたしへのじゃれ付くような仕草はこの時以外にない。
 高橋川沿いに凡そ1.2キロメーター下流に横川町橋がある。
 この橋を渡り帰りは右岸の道をとる。
 往復2.5キロ弱の道程になる。
 散歩が好きな割には、この犬は横川町の橋まではわたしのリードに任せて決してわたしの前を歩くことはない。
 処が、この橋を渡り切るや計ったかのようにりりはわたしをリードするように先頭を突き進むのです。
 不思議な習性の持ち主でした。
 恐らく、異常なほど高ぶる帰巣本能かもしれない。
 何ゆえならば、この犬は捨て犬だった事に起因するのかもしれない。
 
 先日の体調不良を機に、この愛犬は散歩を躊躇うような仕草を示し始めた。
 まったく拒否するほどでもないにしても、わたしに曳きづられるようによたよたと付いてくるようになってしまった。
 それでも、予定のコースを歩き切ると、老犬なりに得心しているかのように見える。