老いぼれの台湾行《12》

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その12=台北の夜
 
3-日本語の通じる娘さんたち(續)
 
案内された鍵屋さんでも、片言の日本語を話す店員さんが、たかが安物の南京錠の客にも親切さに百二十パーセントの誠意をこめて対応してくれた。気持ちがよかった。
パン屋さんでたった一個の買い物ではあったが応対は立派に洗練されたいた。
もう一つ笑い話にもならないようなハプニングがあった。
古本屋さんの軒先で、たまたま一冊の日本語の書物を見つけた。
武道と禅との関わりを記したものだった。著者は薄学のわたしには存じ上げない。
それにしても、なんとも古めかしいひなびた代物に映った。
人の良さそうな初老の店主と思しき方に、お値段を伺うと八元だと答える。
日本語はさほどお上手ではなく、なんとなく八元だと聞こえた。
わたしの方からも本当に八元ですかと確認を取って、100元紙幣を取り出すと俄かに狼狽えた顔で手を大きく振る。
否定の意味であることはよくわかった。
耳をそば立ててよく聞けば、八元どころか何と八千元であることに気付いた。
這う這うの体でわたしたちは、そのお店を逃げるようにして立ち去ったのでした。
ホテルに帰ると、オプション参加のみなさん方はとっくにお帰りになっていた。
 
この度のツアーの最大の収穫は何かと問われれば、紛れもなくこの一連の事柄だと答えるでしょう。                     台湾行 終