老いぼれの愛犬日記《12》

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12 CTスキャンが怖い
 
 病院の女医先生によれば、この定期的に襲う癲癇症状の発作は恐らく頭部を殴打したことが原因だろうと言われる。
 処が更に続けて、もしも脳細胞に悪性腫瘍が生じている事に起因するとすれば生命の維持は絶望的だと説諭される。
 そのためには体調の回復を待ってCTスキャンに頼るしかないという。
 故に以ってわたしは、この犬をしてCTスキャンに掛けるのが怖い。
 数日後息子らの説得で、漸く決意するに至ったが結果は案の定裏目に出てしまった。
 8月23日夕刻医師より死の宣告を聞かされる。
 右脳側室部付近に明らかな腫瘍を見出したと写真データーを解説する。
 余命はせいぜい一週間の見立ては的中したことになる。
 八日後の31日にりりは帰らぬ物体と化した。
 賢明で聡明なるわが愛犬は犬なるが故の鋭敏な直観力でその一部始終を耳にし総てを悟ったのだろう。
 りりよ、お前に対し何と非情なことを仕出かしたか。
 ゆるしてくれ!済まなかった!
 その間のなんと長かったことか、またなんと苦しかったことだろうか。
 でも絶望の淵から這いずり上がろうともがく様に生き続けたこの犬の生き様は実に見事だった。
 極めて良心的な担当医の先生より心尽くしの豪華な献花が届けれた。
 あまり前例を知らない異聞と云わざるを得ない。
 りりはシッポを振りながら極楽浄土へ足早に旅立っていった。