うらなりの記《107》

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⑬ 私の目からは堰を切ったように涙があふれ出て、止め処なく流れ出て声にならない声で烈しく泣いた。
男泣きに号泣し慟哭した。
場所をわきまえて、高ぶる感情を制御すべきとは意識したもののわたしの心体 ( しんてい )からは周りの情景が完全に消え失せてしまった。
母とわたしが、二人だけの霊界で対峙していた。
母を亡くした悲しみより、どうしようもないくらいに不甲斐無いこの息子をこの母は気遣いながら寄り添ってくれたことへの感謝の気持ちと、その償いが最早できなくなってしまったことへの痛恨の念がまさに堰を切って怒涛のように覆い被さってきた。
恐らく、傍目には半狂乱の図に映ったことだろう。
 
弔意を表わさんと馳せ参じてくださったご近所の方々が、柩を遠巻きして待機していただいていた光景を今以って忘れはしない。