老いぼれ教師の回想記《109》

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その六  石垣の 陰に潜みし 将中や
 
礼に始まり礼に終わる=その2 
 
旧市街地の家並みには旧家が多く日本古来の二世帯住居が依然として主流を占めた。
祖父母と共に居ること自体が気持ちの上での安らぎのクッションと成り得た。
 自然に醸し出される精神安定剤に他ならない。
道行く辻辻の門ごとにこころ和む年寄りが佇み微笑を返すだけで全て事足りたわけだ。
 無言の教育がごく自然な成り合いのもとで出来上がったのだろう。
純心で純朴な、身体こそ大人同然に成長していても今以って天真爛漫な中学生が、此処小将町中学校には温存されていた。
 良識ある人たちの目にすらこのことが奇異に映った。
兼六園をそぞろ歩く観光客たちの目にも自ずと留まった。
絶賛の声が巷間に伝えられたのも何ら可笑しいことではない。
 今改めて振り返ってみるに、この既成事実化された現象をあたかも自然保護地域のように俗界より隔離保存する手立てはなかったものか。 それ程の希少価値を見出すべきではなかったのだろうか。