老いぼれの夕雲考《107》

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夕雲流剣術書        小出切一雲 誌(33)
 
邪道に流される正統性=然るに師たる者は
 
㉖【人に依て初めては、心理を信仰して實事を望むふりに勉むと云とも、畢竟の内意は、巧者ならば人も教へ廣めて世上へ其名を顯し、當分流浪の間は弟子中の助力を受けて貧窮を救ひ、或は官途を望み又は這藝を售て、小祿を貪る爲と思ふ意地の輩も有るべし、】
口語訳
誰しも初めの内は、心から信じて疑うことなく真実を追究し勉励するのですが、しかし残念ながらやはり行き着く所は、我が身の剣技が熟練すれば他人に物を教える上で好都合であり、また世間に我が名声を広められはしまいかと安易なことをついつい思ってしまうのであります。
そうすれば、浪浪の身であっても弟子からの助けによりどん底の貧窮から免れることだろうし、はたまた仕官を望むものならば、この技芸を売りつけて僅かばかりの俸禄を貪る性根の卑しい輩もお出ましすることになりましょう。