老いぼれの愛犬日記《21》

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           らんらんとした目付きで「死」と対決中のリリ
 
㉑道行く人へ
1リリ元気か
 
近所のスーパーでパートをなされると或るおばちゃんが決まって家の前で「りりー元気かあー」と大きなお声で、わが愛犬に向かって御挨拶をなされた。
心得たもので、わが愛犬も呼応するかのように「ワワーン」と吠えた。
如何にも返事を返したように間合いがよかった。
逆の場合もあった。
なぜか、りりの「ワワーン」という鳴き声の後間を置かずに例のおばちゃんの甲高い透き通った「リリー元気かあ」の声が響き渡る時もあった。
遙か彼方の遠くを察知し、犬が先に挨拶したのだとわたしは理解した。
わたしは家の中に居て、その場面を現認したことは一度もない。
両者の声の交歓を耳にしただけのことです。
散歩の途中で、そのお方に出会った折には照れくさいのか、その挨拶の交換は成立することはなかった。
りりが天国へ逝ってからは、そのおばちゃんの天国にまでも届かんばかりの透き通った甲高き美声を耳にすることは決してないのである。