老いぼれの居合稽古《3》

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その3
 樋入りの現代刀備中の源祐光は小気味よく刃音がする。
 樋がない新々刀勢州の古江清秀は微かにしか聞き取れない。
 刃音すれば如何にも斬れそうで素人受けするらしい。
 でも科学的に分析すれば、刃音そのものは空気振動に過ぎず高い音がすれば空気抵抗が大きくなり、刀自体は鋭く振り切れてはいないのだという。
 逆に樋のない刀は鋭い振りが適い実戦向きであったのだといわれる。
ただ体験上素人なりに判断した事なのだが、刃音は刃筋正しく柔らかき手の内が決まらない限り出そうとしても出るものではない。
 刃筋が通っていなければ問題外だ。
 更に付言すれば剣先と云おうか物打ちが打突部位に大きな弧を描いて喰い込むかどうかで決まる。
 いわゆる、曳き切りと相成ろう。
 鋭く切り放つのではなく、ぶった切るだけでは様にならない。
 むしろ刀が折れるか曲がるか捻じれるしかないと思う。
 刃筋正しくなければ刃音に関係なく物体は切れないと思う。
 往時、わたしの素振りを見た高段者のお方は「あなたの刃の音は頭の上の方からだ。
 そんなところでものを切って何の意味がありますか」と云われたことを恥ずかしく思い返すのです。