老いぼれ教師の回想記《116》

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その六  石垣の 陰に潜みし 将中や
 
職場の親睦=その1
 
時代は過ぎ去りました。
最早、斯くも悠長なことは夢のまた夢物語でありましょう。
許されるはずもなく厳しき世の糾弾を浴びること必至でありましょう。
信じ難きほど時代離れした、古き良き時代の一齣なのです。
 
 空き時間になると職員室の片隅に何とはなく車座になって釣り談議に花が咲かせる連中がいた。
特に月曜日には常連たちの定例会議となった。みな釣り部会と称した。
校務分掌上の時間割編成時に教務担当の方が好意的に気を利かせて釣りキチ連を一堂に会せるように格段の配慮を施したとしか言いようがないのである。
 典型的な中規模校の体裁を整える此処小将町中学校はとても麗しき家庭的な雰囲気をむんむんと漂わせる素晴らしき勤務校の一つであった。
みな童心に返り嬉々として釣果を競い合った。
失敗談の笑いの渦にみな巻き込まれたのである。
 私とて金石時代からすれば二十年選手ほどに年季が入っており、最早ドジを踏むようなことはなかったと自認したいのである。
 処が、ある年のボーナス支給日に金石の突堤まで出向き、その折に胸ポケットの懐中より未開封の現ナマ袋を路上に落とし気付かぬままに帰宅し、慌てふためいて舞い戻った苦き思い出や河北潟の貯木場での真鮒を狙った折りにバランスを崩し上下のスーツ姿のままものの見事に水中に沈んだこともあった。
主客転倒も甚だしいお魚が陸へ主が水に入るのだから笑えないのである。
着替えを如何様に処理したかは今以て思い出せないのである。
実に馬鹿げた愚かしいお話に過ぎないのです。