雑草園顛末記《32》

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 庭の剪定は以前から気にはしていた。
藤井造園さんには、引っこ抜くなりして大伐採をお願いしたい旨連絡を入れて置いた。
ところが幾ら待っても藤井さんからは梨の (つぶて )もない。
恐らくは、丁重に剪定をお願いすべきところを行き成り引っこ抜き作戦を持ち出したので、さすがにこれには同調し応じ難いと判断なされたに違いない。
庭師さんのメンツを丸つぶれにし自尊心を傷つける暴言であった事に漸く気付いた。
引っこ抜いてくれとは如何にも失礼な言い草だ。
反省せねばならない。
 
仕様がないのでわたしは老骨に鞭打って単身勝負に出た。
奮い立って躍り出た。
軍手にハサミとノコギリに鉈を携えて挑みかかった。
心を鬼にして躊躇なく薙ぎ倒し引っこ抜いた。
遣れども遣れどもこころは晴れなかった。
 
と言うのも、作業中には人様の心中を傷つける言動に悔悟の念を滲ませながら至らぬ我が身に大鉈を振るって制裁を加え続けたも同然だった。
あの温厚な藤井さんの胸中に逆らってしまったおのれを悔いた。