老いぼれ教師の回想記《120》

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青天の霹靂=その1
 
 遠いむかしのことである。
 その息子たちも既にあの当時のわたしの年齢に達しようとしている。
 すべて時の流れが解きほぐしてくれたことになる。
 なんとか親子ともども平穏な道をそぞろ歩けることを喜ばねばならない。
 
 宜しからざる事は忘却の彼方へ追いやればよいのだが、そうは行かない事もある。
もしも此のことを記憶の範疇から消去してしまえば私は人の子の親としての資格を自ら放棄することとなり、更には天命によって何もかも全てが剥奪され人の世からの永久追放を宣せられてしまう結果に終わることは十二分に承知していた。
 なんと言っても親に一番の責任がある。
ましてや曲がりなりにも教育者であれば立場上申し開きはできようはずがない。
弁解の余地なし。
全面的に親権者としての明々白々たる重大な落度を認めざるを得ないのである。
父親として我が子を養育していく上に過大なる瑕疵があったと第三者から厳しく追及され指弾されても抗弁できようはずがない。
罵りや謗りの言葉を四六時中に亘り来る日も来る日も全身に浴びせられ続けた。
針の山を転げ落ちた所は針の筵の上であった。
私はまたしても発狂してしまった。
生きている生身であるが故に刺さった言葉の針の痛みに耐えることができなかった。