わたしにとっては日課の一つになったサイクリングロード、通称四つ額峠を越えれば下り坂に差し掛かり四十万の集落へとつながる。
登りの難所を征してルンルン気分で風を切ってどんどん走る。
遠くの微かな金木犀の香を捉えて間もなくすれば毬栗の里に入る。
やあ有るではないか有ったではないか。
約束したかのように今年もあるではないか。
さもしい魂胆とは知りつつも白昼に堂々と隠匿するかのように栗拾いに没頭する。
この齢に至れば最早羞恥心は何処へやら。
巨大な丹波栗を数個ゲットするに及べり。
さすがにそれを我がポケットに仕舞う折にはそれとなく周辺に目を配ってみれば案の定少しばかり離れたカ所に居るではないか。
四人ばかりの小学生の坊やたちがいるではないか。
わたしは突然大声を張り上げて「おーいクリがあるぞーみんなお出で―」と叫んで自分を誤魔化していた。
カムフラージュしたわけだ。
まだ少しは羞恥心を忘れないでいた自分に気付きヤレヤレと思った。
一個づつだが巨大なる丹波栗を坊やたちに手渡してやったのでした。