老いぼれの夕雲考《118》

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夕雲流剣術書        小出切一雲 誌(44)
真剣を帯び殺戮が罷り通った時代に於いてすら夕雲と一雲は高尚なる形而上的思索を試みている。
「天の理」とは、「人の性」とは何かを厳しく洞察しているのには驚くばかりである。
 
人間は万物の霊長なり
 
【其性寂然として不ㇾ動時は、性の儘にて別に言語を入るゝに及ばず、感じて物に應ずる則は夫々に随うて過不及なきの理行はる、此時始めて道と名く、此道千變萬化にして、人間一生之間限りは無し、】
口語訳
 
また、その性が静に徹して微動だにしない時は、性は性のままで格別、言葉を挟む必要もありません。これを静虚・無欲と称し、中の徳なりというのであります。
処が、性が何かを感じて物に応ずる時は、随時過不足が生じないように、その時には人知を超えた神の定めた道理に従うのであります。
これを、寂然不動にして感ずるものがあれば、中の神理なりと申します。
此の時に至って、初めて道と名付けられるのです。此の道は実に千変万化しながら、人間の一生を通じて限りなく纏わり付くのであります。