老いぼれの独り言

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                            6枚目にならず・・・
 
 
4年前に義母が亡くなった折に酒器などの焼物や掛け軸などの骨董品の類いを長持に入れて形見分けとして頂戴していた。
その中に古びた軍刀仕込みの脇差が一振り紛れ込んでいた。
恐らく、先に亡くなった義父が他人から譲り受け大切に保管していたものに違いない。
登録証らしきものは添えられてはいなかった。
と云うのも、その海軍の指揮刀は戦地にて軍艦諸共一たびは海底に沈んだものらしく相当に著しく錆が喰い込んでいた。
依って、登録するに当たらいないとそのまま放置したものだろう。
ただ、その脇差には立派な銘が彫り込まれていて、「肥前国忠廣」とあった。
刀剣類の目利きではないので判らないのだがネットで検索すれば一応名の通った刀匠らしい。
実はその刀をわたしは正式に登録を済ませ大事に保管致そうと先ずは最寄りの警察へ発見届けに赴いたのだ。
其処で一体何事が起こったかについては思い出しただけで胸苦しい。
取調室と称する薄暗き個室に閉じ込められ丸で被疑者を痛めつけるかのように意地悪な尋問の集中砲火を浴びる。
取り調べの可視化が時代の脚光を浴びている。
当に此れほど妥当な措置はないことを身を以ってわたしは実感した。
数人の警官たちが入れ代わり立ち代わりしてねちっこく嫌味タップリにこっつき回す。
極めて非人道的非情の世界だった。
密室内の不条理なる世界に閉じ込められ遂に老輩は屈服させられ敗北した。
「飛んで火に入る夏の虫」を自ら自作自演した。
愚かにも我が身で墓穴を掘ったも同然なのだ。
悪意なく善意一色で自己申告したことが裏目に出てしまった。
義母死亡日時より本日まで不法所持したので身柄を拘束し送検もやむなしと云う。
前科者として子子孫孫に累が及ぶぞと云う。
法律には勝てない、わたしの全面敗北でした。
軍人の魂を吸い取った名誉ある日本刀は国家権力に依って没収の憂目を見てしまった。
舞鶴」「江田島」に存するであろう戦争博物館移送もままならず屑鉄同然にスクラップにされるであろうと仲介の労を取っていただいた教育委員会文化財保護課の若き善意の吏員は痛々しい声色でわたしに語り掛けていた。
いや、もう既に熔鉱炉にて処刑されているかもしれない。
ひとかどの美術工芸の逸品が葬り去れてしまった。
掛け替えのない文化遺産が非情にも反故にされてしまう。
文化大国たる日本国にとってはこれ程の恥さらしはない。
国際的にも恥ずかしい。
無念至極、断腸の思い募るばかりだ。