老いぼれのひとり言

先日の左義長からの帰り道は主要幹線道の右側歩道を慎重運転で以ってペタルを漕いだ。
そこは緩い下り坂でなおさらゆっくり走らせたつもりだったが案の定右手の小路から軽自動車がぬーと顔を出してきた。
双方、ブレーキを掛けて事無きを得たのだが先ずはわたしの方から自動車のドライバーにお先にどうぞと身振り手振りで催促した。
ぞんざいな流儀ではなくたなごころを上に向けて丁重にどうぞどうぞと促がしたのだが動こうと為されない。
のみならず、わたしと同年配と思しき運転席のお方は自転車のわたしに先に行けと
手首を忙しなく振ってのジェスチャーだ。
 再び、わたしは先方さんに先を譲るべくどーぞどーぞを繰り返す。
 向こうもなかなか譲ろうとはなさらない。
 その間、そんなに長くはなかったのだが暫し無言劇の押し問答が展開されたのでした。
 結局のところは、わたしが折れてお先に失礼いたすことに致しました。
 すれ違いざまに運転席を覗い、“どうもありがとう”とお世辞笑いを作って先方さんに目を遣れば笑顔でのお返しではなく
“ヤレヤレ此れで済んだか”と納得顔のお様子なのだ。
 つくづく思うに、此の双方何れ劣らぬ頑固親爺同士、わたしは吹き出してしまいました。
 又よくよく考えれば、此の双方幼き頃には学校の先生より「謙譲の美徳」の徳目を十二分に授かりし間柄同士であったのかと下手なパントマイムを演じながらも不思議と親近感を覚えたのでした。
 
 
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