老いのひとこと

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額四峠の一角にとても芳しい香りを発する箇所がある。
カメラに納め一度はブログの挿画にも用いた。
その名前に興味があったので図鑑で調べるがなかなか判りづらい。
ならば、県の自然史資料館が手っ取り早やかろうと駆け込んで尋ねる先に、それは『クサギ』ですよとまさに瞬時の即答を戴いてしまったのです。
手折れし花々が発する芳醇なる香りだけで此のお若き学芸員嬢は笑顔を添えながらいろいろ解説して呉れたのでした。
クサギを漢字に表わせば『臭木』になり此の花の素敵な香りとは裏腹に葉っぱが一種異様な悪臭を漂わせるのだという。
この時期より若葉が出揃う頃こそ強烈なのだとおっしゃる。
付け加えて、同類相憐れむように此の臭木の葉にカメムシ通称ヘクソさんが寄り添って日向ぼっこをしてますよと面白いことを言われる。
ところが、地方によっては此の「臭木」の葉を旬の食材として御浸し用に食されるところもあるのだそうだ。
確かにところ変われば品変わると云えましょう。
可憐な純白の五枚の花弁の先に細長く真っ直ぐに伸びた四本の雄蕊に丸く曲がった一本の雌蕊があることを教わった。
ジャスミンの香に似た甘い匂いに誘われて蝶などの昆虫が受粉を助けるのだという。
秋には結実し小鳥たちが好んで啄ばみ瞬く間になくなってしまうらしい。
また、熟した実は草木染めの格好の染料となり美しい空色に染め上がりますよと解説は続くのです。
最後に、この「臭木」はほんの少し前までは「くまつづら科」の植物と分類されたらしいがごく最近にはDNA理論が定着した関係で「しそ科」の植物に変更されたのだとお話しを締めくくられました。
 
家に帰り、そっと葉っぱを磨り潰してみたがまったくその種の匂いはしなかった。
むしろ、玄関先に置いた切り花が強烈すぎる香水を振り撒いたような素敵な香りを狭い家中に充満させたのでした。