老いのひとこと

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夢かうつつか幻か、「いろは歌」に託して只いたずらに時の経過をもてあそんだ。


何故かしら同時に、鉄幹の詩の一片「あゝ われダンテの奇才なく バイロン・ハイネの熱なくも 石を抱きて野に謳う 芭蕉のさびをわれ知らず」のフレーズを何となく、それとなく結び付けてしまった。


そして、間もなくしてまったく以ってチャンチャラ可笑しくもわたしは「一政」や「魯山人」にあやかり我が壺にいたずら書きを施していた。


まさしく笑止千万、愚かしくも馬鹿げたわたくしは只今一介の陶芸家を妄想し芸術家を気取って乾き切らぬ粘土に文字を刻み込んでいたのです。


これは、例の熱病の後遺症から未だに癒され切っていない何よりの証拠かもしれません。


おもろいものが出来たわいと独り悦に入るのです。