老いのひとこと

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車の中でラジオを付けたら何処かの民放で在原ノ業平の話が出てきて洒落た和歌の一句を紹介していました。


 わたしはどちらかと云えばこのような風雅なる世界とは縁遠い存在です。


 でもなんとなく興味をそそる内容だったので一瞬引き寄せられ耳をそば立てていました。


 長引いた寒気が退き漸くにして近付いて来た春らしき陽気に誘われてか、全く知らない初耳の『世の中に たえて 桜のなかりせば 春の心は のどけからまし』の歌が丁度時期的にマッチしたようなのです。


 花が咲くのを今か今かと待ちわびるあのある種のときめき感はとてもいいものです。


今年もまた、気もそぞろにそわそわ浮き浮きしながら気を揉む自分が今此処にいるではありませんか。


 そして、満開を愛で惜しむ間もなく早くも散り初め萎え凋み去りゆく命のはかなさを甘受しなければなりません。


 華やかさと裏腹にセンチな寂寞感を今年もまた味わうのならばいっその事ならもう奇麗さっぱりとさくらの花なんか此の世にない方がまだ増しかも知れない。


 そんな気持ちに誘い込まれる古今集の一句でした。


 併せて、むかし国語の乙で憶えさせられた『花の色は 移りにけりな いたずらに 我が身世にふる 眺めせしまに』を思い出し猶の事はかなくもむなしい気持ちにさせられてしまいました。