老いのひとこと

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初年兵の一か年があっと言う間に過ぎた。


 あれよあれよと手を拱いている内に二年生に進級することが決まってしまった。


 改まった進級テストをクリアするまでもなく決まったことは決まったこととして此処は快く請け給わらねばなるまい。


 本日は、大先生の総締め括り講義で以って終わった。


 殊更、修了証書が手渡された訳ではないが次年度へ向けての気引き締まる思いを新たにした。


 上手下手はともかくとして兎に角自分らしい味、個性を存分に追究する一か年にしなさいとの檄をいただいた次第なのです。


 講義の途中で、釉薬で模様を描くよりも弁柄=紅殻=Bengalaを用いるべしと先生自らその場で筆を執っての実演を為されたのです。


 さてさて此のわたしにはベンガラとは一体何ぞや、


釉薬のようで釉薬に非ざる此のベンガルの意味を質そうとしたのだが余りにも幼稚過ぎて恥ずかしくとうとう躊躇してしまった。


 斯くなる基礎的予備知識に疎い我が身をまたまた恥じ入った次第だ。


 早速、ネット検索すればなんと日本画の貴重な岩絵具に対し土絵具という顔料が在って此の土絵具の一つに弁柄なるものが含まれるのだという。


 そして、此の弁柄なる顔料は硫酸鉄を高温で熱し苛性ソーダ―で中和すれば生成されるらしのです。


 何と有史以前から存在しラスコーとかアルタミアの洞窟壁画で検証済みだと云うから驚きだ。


 更には、江戸時代の浮世絵絵師たちが此の紅殻をインドのベンガル地方より輸入して活用していたのだと知って猶の事驚かざるを得ない。


 もっと驚いたのは東茶屋街のベンガラ屋敷は此の弁柄に他ならず水気や熱気、酸アルカリ性にも耐える耐久性を発揮しているのだというのです。


 尤も、今日では天然のベンガラではなく化学合成されたものらしいのです。


 何れにしろ、あの厄介なる化学式の迷路に阻まれて前途多難なる新年度を迎えるのです。


 


*酸化鉄(Ⅲ)=酸化第2鉄=赤色酸化鉄=弁柄=赤サビの事