剣道はすごいぞ≪9≫

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『剣道はすごいぞ』


   ―伝統と文化を大切にしてよりよい日本国をめざそうー


 


孫娘の高校の剣道部が風前の灯火になった。


御身一人で懸命に新入部員の勧誘に当たったが駄目だったという。


不憫なことだが孫だけに責任を取らせることはもっともっと不憫だ。


あの一時のブームは一体どこへ行ってしまったのか。


いったい何が原因で何があったのだろうか。


 


 


 


剣道ブームはどこへいったか


 昭和五十年代のころ、日本国に剣道ブームが沸き起こった。


終戦直後の混乱の中ひもじい思いをつのらせた飢餓状態からようやくにして立ち直り全世界が目を見張るなか日本国は高度経済成長の時代の波に乗って物凄い勢いで豊かさを手に入れていった。


 お金さえ出せばなんでも手に入る物質文明を謳歌する時代に入り、遂にはお金の力で精神的な充実感を充足させるまでに余裕が生じたのでしょう。


わが子に日本人の魂が育つことを望み始めたといえまいか。


わが子がよい子に育ってほしいという親としての願望が一気に時代的要請として高まったのである。


 日本剣道連盟も高らかに剣道の理念を謳い上げ、剣道をすれば人間形成が約束できると言いきったのである。


世の親たちはわが子が剣道さえすればみんながみんな良い子になると信じたのである。


国を挙げての剣道熱がブームとなって盛り上がっていったのです。


 


なぜブームがバブルと化して消えてしまったのか


 灼熱のグランドで球を追う球児たちは、やがて夕やみ迫るころには整列脱帽しあらん限りの大声で無人のもの言わぬグランドに向かってありがとうございましたと礼を述べている。


相手チームにもスタンドで応援する数少ない人たちにも深々と一礼し感謝の気持ちを無邪気な童顔を笑顔でほころばせながら精一杯表現しようと一生懸命だ。


球児たちには、何よりもチームワークの大切さを体全体に徹底的に沁み込ませ一丸となって協調性を鍛え上げている。


プロ野球から高校野球・少年野球へとその底辺の裾野は広がる一方だ。


それにも増してサッカー熱はさらに野球以上に過熱するばかりではないか。


 つまり、剣道以外の野球・サッカーその他のスポーツであれ立派によい子が育つことが証明されたわけだ。


人間形成は剣道だけの独壇場では決してないことが見事証明されてしまったわけだ。


 剣道以外の競技スポーツの魅力の前に、剣道の影が次第に薄められていった。


当然のこととして然るべき関係筋はその原因を究明し善後策を講じたことであろう。    
当然ながら全日本剣道連盟は剣道自体の体質面において何か問題点がなかったのか、原点に立ち返っての猛省がなされたはずだが一般のものにはその内容が明確には見えなかったし伝えられなかったような気がしてならない。