老いのひとこと

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無断掲載



おみおくりの作法」のDVDをレンタルショップより借り受けパソコンで鑑賞した。


我が家にはビデオデッキはあるがDVDのデッキがないのでどうしようもない。


当初はむずかって悶着したが孫のお陰で観ることができて何よりでした。


此の映画を知った切っ掛けは、例の宗教講座でとあるお坊さんから推奨があったからなのです。


この映画はカラーですが宗教色はついていない。


何宗にも何宗派にも無関係で死者の霊を慰め弔うことに関しては世の東西を問わないことがよく理解できたのです。


イギリスの代表的演技派男優エデイ・マーサンさんがロンドン市役所の民生課に勤めるジョン・メイなる一公務員の役を見事に演じ切った。


真面目で几帳面しかも無愛想な融通の利かない男ではあるが彼は自分の公務には異常なほどの情熱を傾けた。


人生の敗残者が誰からも看取られることなく寂しくこの世を去る。


此の誰からも顧みられることなく孤独死したその遺体を処理するのがジョン・メイのお仕事なのだ。


身寄りのない遺体に分け隔てなく真摯に寄り添い彼独自の「おみおくりの作法」を施し恭しく弔う姿はとても健気に映った。


仮に身寄りの者がいても肉親間の打算的骨肉の争いで終ぞ浮かばれない世相を鑑みればむしろ身寄り無くジョン・メイの手に掛かった方がより幸せなのかもしれない。


福祉の先進地イギリスならではの物語なのかもしれません。


福祉の貧困に喘ぐ者からすれば此の映画の主人公に羨望の念を抱いても可笑しくはない。


 


 


何事にも慎重な主人公は道路の横断には左右を確認する性癖が身に付いていたはずだったのだが土壇場で意中の人に心を馳せたばかりに不用意に道路を横断し急転直下のどんでん返しの結末で此の映画は終わる。


身寄りのない主人公ジョン・メイは誰からも見送られることなく天国に召されていく。


しかし、此の映画はヴェネチア映画祭受賞作品だけあって劇的な救いの場面が設定されていたのです。


主人公ジョン・メイの棺が土葬され始めると音もなく何処からともなく嘗てジョン・メイの手に掛かり手厚く葬られた身寄りなき死に人たちの精霊が彷徨い出でて生前のジョン・メイの偉業を褒め称えるのです。


暗く寂しいこの上なく悲しい映画ではあったが此のラストシーンがあって此の映画は甦りとても清々しい輝きを放つ素晴らしき映画に生まれ変わったのです。


わたしはそのように確信している。