文字通り泥で作った泥船は直ぐにダメになりました。
やっぱし予期した通り使い物にはなりませんでした。
先日の事、素焼き窯から出てきた皆さん方の秀作名品の数ある中から自分の駄作は駄作だけあって意外と容易く見付けだすことが出来るのです。
なるほど、図体だけの硯屛( けんびょう)と風変わりな偏壷 ( へんこ )と何の変哲もない湯飲み茶碗はいとも簡単に捜したのだがもう一点船形深鉢が見当たらない。
隈なく行ったり来たり目を皿に入念に捜せど何処にもない。
無いもそのはず完全に原形を留めることなく木っ端微塵に砕け散っていたのです。
陶器の破片の掃き溜め箇所に埋まっていたのだから分かるはずがない。
既の事で廃棄処分されることでした。
悔しいやら恥ずかしいやら悲しい思いを顔には出さずに平静を装いながらそっと欠片を回収し持ち帰ったのです。
見るにつけ忍び難く、或る日わたしは陶器用接着ボンドを持ち出しいじらしくもそっと欠片を繋ぎ合わせてみたではないか。
