老いのひとこと

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体育館の東のコーナの隅っこにわたしの占用スペースが宛がわれる。


西側半面の背後に卓球台が数台並びいつも盛況だ。


本格派に混じって年配の奥方常連たちも打ち興ずる。


其の中にわたしのコーチャ格のIさんご夫妻が必ず居合わせ其の見事なるご精勤振りにいつもシャッポを抜いだ。


わたしも時折り気が向けばご夫婦におねだりして一時打たせていただいた。


実に名コーチで在られどうしたことかこんなわたしでもフォアのラリーが成り立つのです。


 


ラバーを張り替えたのを機会に是非ともおねだり致そうと待ち構えるがどうしたことか最近お姿を見掛けない。


二週間ばかりご沙汰がないので気掛かりだ。


多分お孫さんの下へ参られたのでしょう。


 


今日は春の陽気に誘われて久方ぶりにラケットを振った。


彼これもう一年振りにペンホルダーの感触を味わうことになろう。


上手く行く筈がない他人の腕のようにぎこちなくボールは弾いては呉れない。


それでもご夫妻は根気よく相手してくださった。


嬉しかった感謝いたさねばならない。


 


 


次の日にも無心して打たせて貰った。


昨日よりも少しは増しだと好い気で打ち合う内に鋭い打球がフオアーのコーナーに来た。


わたしは無意識的に体を右へ開き飛び付いたまでは好かったが右足の踏ん張りが効かず体勢を崩したまま壁面に激突し無様にも伸びてしまった。


背中と腰が首と頭をカバーして呉れた。


幸い大事には至らなかったが此れぞまさに「年寄りの冷や水」と云えまいか。


ご夫妻には相済まない事です。


誠に申し訳ない事です。


 


 


それにしてもわが胸の内は不謹慎ながらも「われ老春に興ず」の境地に浸ったのです。