老いのひとこと

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ルーマニア美女とのハプニングのその直後に又してもとても奇異なる出来事に遭遇することになる。

深々とハットを被る年配の好紳士がわたしに近寄って来る。

手入れの行き届いた髭を蓄えた其のお方は何処かで見掛けた気がしないでもないか能く思い出ない。

先方さんもわたしの顔をまじまじ見詰めて

旧知の仲のように随分と馴れ馴れしく何事か語り掛けてくる。

何処か雰囲気がサイトウさんに似通るので

わたしは「やあハジメさんですか」と念を押せば首を横に振る。

「どちら様でいらっしゃいますか」と改めて尋ぬれば東京から来ましたと応える。

カメラを携え全国行脚だという。

金沢の街を満喫しているという。

立ち話はそれ以上深入りせずその場を離れたのだが見ず知らずの他人様から軽々しく声を掛けられるなんて滅多とない。

不思議な一日であった、わたしの髭づらが古都金沢の雰囲気を醸し出すなんて在り得ぬことです。

その足で中学校の旧友たちと久しぶりに出逢った、老舗の手料理に舌鼓を打つ。

ただ集うものが激減し六名に過ぎなかった。

七十年の年月の流れの必然かも知れぬが何んとも寂しいことではないか。