お彼岸が近付いたのかもしれない「半山君の墓」に逢いたくなり妙典寺へ赴く。
我が母方たる津田家の菩提寺に他ならないのだが今や其の関わりは失った。
現存する津田家の当主は何の前触れなく墓仕舞いを断行し五世紀間つづいた檀那寺としての縁を無碍にも断ち切った。
在りし日の津田家の存立を明かす墓石そのものが此の地上から抹消され消滅した。
そうした中にあって奇跡的に難を逃れた唯一の証しが此の「半山君の墓」に他ならない。
先祖を悼み手を合わせ乍ら余は余の肝に銘じた。
津田家の当主に代わり此の拙者此の墓の主となり守り抜く決意を新たにした。