老いのひとこと⑪

f:id:takaotm1101101:20200409065835j:plain

又しても同じことを繰り返す。

我が母方先祖―津田家の本家筋に今枝家の血を汲む要人が嗣子として入籍し夭逝した平太夫正室を妻として迎え平左衛門近英を儲けた。

即ち今枝要人と堀十郎兵衛の娘の嫡子として本家六代目当主津田平左衛門近英が在位しその近英の嫡男津田和三郎近知が七代目を継ぐことになる。

処が近知には実子なく分家より津田十之進を養子にするが明治維新の動乱に紛れ所在を失い二人目の養子津田近三を迎える。

此の近三は十之進とは異母兄弟とみる。

近三は養父津田和三郎近知をこよなく慕い尊崇の念を抱きて敬愛し寺町妙典寺に「津田半山君之墓」を建立した。

此れはわたくしの個人的私見にすぎぬことだが恐らく近三の胸中には今枝家を称える複雑な想いが混在し「今枝半山君」と記銘致すべきか少なからず迷ったんじゃなかろうか。

津田家の中に今枝家の血が流れ津田家の血統を失ったことへの喪失感や疑念が在る一方大家今枝家への畏敬の念が交錯し、近三は弟伴四郎や近吾らからの力添えを得て津田半山に意を決した。

そんなカラクリを絵に描きながら独り悦に入る。