老いのひとこと㊶

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歴史に色どりされた古都金沢に居を置く愚人である。

先祖を辿り我が身の素性を調べる内に意外なことに出くわし度肝を抜かれる。

寺町妙典寺境内に建つ荒々しくも自然石を立てたような「津田半山君の墓」と嘗ては

野田山墓地芝山の地に鎮座した「津田清三郎近猷の墓」に刻まれし碑文、並びに

「津田金太郎近義の墓」に刻まれていた碑文にも共に貴重な歴史の一断面をくっきりと浮き彫りにする立派な歴史遺産が在った。

ところが敢え無く人為の手が加えられ無惨にも此の世から抹消されてしまった。

もう此の世にはない、悔やんでも悔やみきれない此れほどの不祥事はない。

偶然にも奇跡的に受難を免れた「半山君お墓」は二人の和三郎の遺徳を湛える意味合いは元より今枝家の凋落の兆しを象徴的に表す一物件でもあり、また人持組の威光にひれ伏す平士の藻掻きにも似た葛藤場面をいやが上にも彷彿とさせるのです 。

また清三郎がわが若き妻を偲んで認めた碑文の中にも更には同じく清三郎がわが生母の生い立ちから人となりについて刻まれし碑文の中にも遠藤高璟や津田正隣をも包み込む大きな歴史遺産の片鱗があちこちに散りばめられていたのです。

斯くなる歴史的な遺産の数々を次世代へ継承する勤めが在ったであろうが其れが蔑ろにされたことは残念でたまらない。

せめて現存するものだけでも大切に保管し後世に継承いたさねばならない責務に駆られる。