2023-03-12 老いのひとこと 突如、義妹が意識混濁の重篤症状に陥ったとの急報で再び家内と共にサンダーバードに飛び乗った。 いずれは誰しも訪れるであろう瀕死の窮状からの脱却を求めてみな必死の思いで声を掛け手を差し伸べる。 取り分け連れ添いの義弟からの愛情溢れる心尽くしの仕草は痛々しくも胸をうつ。 手厚い介抱の甲斐あって瞳孔が開いたままの虚ろな視線が潤ったと思った其のとき意識が呼び返り眼球に生気が甦りゆくではないか。 拍手こそなけれどみな一斉に「えいちゃん」と名を呼び合い細やかなる悦びを共有し合う。 「かなざわのねえちゃんですよ」「わかりますか」と相槌をうてば軽く頷き心もち笑顔のような表情まで見せて呉れたではないか。 間違いなく窮地を脱出したようだ。 本人には「明日の入院」を納得させ望みを託し幾ばくかの生きる勇気を授けねばならない。 本人も軽く頷くことで自分の生きる執念をみなに知らせて呉れたようにも窺えた。 翌日の9時には救急車が所定の入院先へ丁重に搬送して呉れた。 3年振りに孫たちに再会することが適った。 みな一段と逞しく大きく成長し目を見張る、みな進級進学に野心を燃やす、頼もしいぞ。 近大理工への念願成就あれ、ガンバレよ。 延べ総キロメーターは如何ほどか、完膚なきまでよくぞ歩いた。 いや歩かされた目的地までは歩かざるを得ない。 正直音を上げた、おのれの限界を知った。 行き倒れの醜態だけは曝したくはなかった其の痩せ我慢の執念で我を張り通した。 よくぞ帰宅できたものだ。