老いのひとこと

石踏み公園をぐるりと回り最後の辺りで小学校のグランドに差し掛かる。

体育の授業を遠くから参観する、50ⅿ走だったり障害物走で懸命にタイムを競う、時には団体種目の発声練習、黄色い声を張り上げるが最近の子どもは余りが元気がなさそうだ。

今日は業間の休み時間だろうか高学年の一クラスだろうかみんなグランド狭しとサッカーに興じている。

男の子に伍して女の子たちもスカートを翻して球を追う。

休み時間の方が自由闊達に嬉々として飛び跳ねる、実に元気が旺盛だ。

しばしポカンと眺めれば遥か彼方の小高い丘陵地に女の子が数人恐らくクローバーの花でも摘んでいるのだろう。

目をバックネット辺りにやれば只一人ぽつねんと佇む子が居る。

動きが少ない俯き加減にうろうろしている。

みんなに馴染めずどうも孤立しているようだ。

わたしの目はその子に集中してしまった。

家庭環境にまでわたしは心を砕いてしまう。

転校生かなとも案じつつ何とかならぬものかと気を揉む次第だ。

わたしは思わず声を発してしまった。

そんなに大きな声ではなく彼に届きそうな声量で「オーイ」と何度か声を届けた。

手に持っていた傘を振り回そうと思ったが思い止まった。

わたしに気付いたのか少し様子が変わった。

体をグランド向け動き始めたようだが仲間たちに飛び込むことはなかった。

その時チャイムが鳴った。

潮が退くようにみなは舎内に吸い込まれゆく。

その子も一緒に校舎に消えた。

 

ヒョイとして登校拒否や引きこもりの予兆なりせば助けてやりたかった。

何もしてやれなかった無力感を暫し味わい其の場に佇んだ。