老いのひとこと

今年も五人の姉弟たちがお揃いで粟津のおびし荘なる共済組合の保養所で一夜の宿を共にした。

家内が確たる情報を得て皆をお連れ申した次第になるのだが実はちょとしたハプニングに見舞われたのだ。皆がたっぷりと湯に浸かり、たらふく美味しい夕餉朝餉に舌鼓を打ってやれフロントから請求書を持参した家内は顔色曇らせ皆に相済まないと悲嘆に暮れて哀訴する。

真っ青な顔で割引特典がない壱萬六〇〇〇円の請求だと恐れおののく。

面目ないと平謝りして徴収した家内はフロントから帰り此れまた別人のように喜色満面で助かったと申す。

不思議なプラン割引が功を奏して安くなりましたと胸を撫で下ろす。

恐らく家内の知人が機密の懇願書を当館へ送付して呉れたに違いない。

か細い老人たちは皆一斉に飛び上がって胸を撫で下ろした。

 

蛇足ながら「おびし荘」の名の由来は

 

霞にも

      肌を許さじ

                    帯仕山

 

艶かしくも千代尼が詠んだ此の俳句にあるという。

当館の東方に小高い帯仕山が嘗ては望めたのであろうか。