老いのひとこと

長享の一向一揆にあやかり高尾城攻略に挑んだ。

さくら晴れの快晴の朝風はヒンヤリと冷たい、9時20分に米寿と傘寿の祝事とこころして第一歩を踏み出す。

 

家内はまだまだ健脚だ、ふらつく身を奮い起こし一本杖を頼りに登る、恐らく此れが登り納めだろう。

 

兎に角、転倒だけは避けねばならない必死の思いで一歩一歩慎重を期す。

 

登り始めの勾配が斯くも急峻だったか些か恐れをなす、山頂近くの手摺りを見て正直安堵する、手摺り設置者の恩義に自ずと感謝す。

 

眼下に日本海と光り輝く城下町を見下ろし記念写真に納まる。

シャッターを依頼し拒まれた覚えはない、山頂にはみな善人しか居ない。

 

下りは更に慎重を期す、本能的に横向きなる、見栄や外聞もへったくれもない、丹田の衰えを自覚する。

 

漸く路傍に咲くスミレの美しさに気付く余裕が見えたようだ。

 

10時20分丁度正味60分の高尾山登頂を終えた。

万が一を考えれば最早単独行為は絶対に許されない、他人様には迷惑をかける訳にはゆくまい。

やはり、後ろの家内が支えとなって呉れたようだ。