うらなりの記《100》

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              がん対策基本法に命懸けで取り組んだ
      『母よ』
 
⑥ 入院しベットに臥した時点で、母は全てを察知し観念した。
周囲の者たちが注ぐ視線から只な らぬ事態を逸早く勘繰り、何にも益 して自身の体調の異変は本人が一番 知っていた。
 今、国会にて癌対策基本法の成立  を報じている。
余りにも遅きに失してはいまいか。
余りにも虚し過ぎはしまいか。
 
早期発見と云うがん検診の制度  は、当時においては望むべくもな かった。
痩せこけて眼球の窪んだわが母が喘ぐように医師から告げられた化学療法や放射線治療の話しを家族の者たちへぼそぼそ耳打ちしたのだという。
外科的療法は初めからなかった。