老いのひとこと

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とうとう来るべきものがやって来たではないか。


朝一番のひと仕事を終えたとき家内から声がかかる。


家の横でライトをつけた車が立ち往生していると云う。


障子越しに見れば深雪に埋まりスコップで雪を搔いている。


二三人目に入ったので人足は足りると判断し朝めしを摂ろうとしたが気が騒ぐ。


その時にあの人物が口にした一つのフレーズが脳裏をよぎった。


「困ってる人を見たら助け合おう」


「困ってる人に寄り添いお互い様に支え合う社会を築こう」と拳を振り上げ突如政界に躍り出たあの人物の顔が目に浮かんだ。


早速、厳重なる冬装束に身支度しスコップ二挺を携え現場へ赴く。


新雪はわたしの膝っこぶを10センチは超える、久方ぶりに豪雪に見舞われたではないか。


食材搬送中の若き女性ドライ―バーではありませんか。


社命に忠実なるお方なのか健気にもおのれの職業意識に燃えたお方なのかそれとも育児と家計維持のため死に物狂いで働くお方なのかそればかりは窺い知ることは敵いません。


後ろから横手から通勤車両が滞りはじめ数人が救出作業に当たる。


お互い様を知る人物と知らぬ存ぜぬ顔で車中に留まる人物に瞬時に類別された。


現実のシャバを見せ付けられた。


若き女性ドライバーは礼儀をわきまえていた。


助け合う気持ちが通じ合ったことを知ってわたしはとても清々しい気持になりました。


此の緊迫場面をカメラ撮りする余裕も図太さもわたしにはなかった。