2021-07-16 老いのひとこと 此れ副反応ではあるまいに外の世界が静まり返って何にも音がしない。 四五十メーター先を鶴来線の電車が通り過ぎてゆく、音もなく車両が視界をよぎる。 昨日までにはなかった別世界に移り住んだような変な感覚だ。 少しばかり聴覚に異常を来たしたことを自覚した。 行き交う車のエンジン音が悉くすべてが高級車輛並みに音もなく走る。 尤も近寄れば路面とタイヤの摩擦音を捉えることが叶ってほっと胸を撫で下ろす。 田に水を引く用水のせせらぎを辛うじて聞き取る。 しかし、ついぞスズメの囀りは耳に入らなかった。 異様な世界をしばし体験した。 夕日が沈み宵闇が迫まりつつあるのに闇夜が赤く染まったままでいる。 実に不気味だ。 明らかに視覚にも異常を来たしたのだろうか。