老いのひとこと

日々せっせと水をやり肥料を施し枝ぶりを整え渾身の力を振り絞って世話を焼いた成果が事もあろうに頭から否定され蔑ろにされれば此れほどの精神的ショックはない。

果実の多くは、隣りご近所へのお裾分けと云うより内心は廃棄処分に等しい。

果実が無碍に毟り取られたと云うより心の糧を失ったことになる。

生きていく上でのバネとなる弾みが消えてなくなった。

さあ遣ろうと決意する意気込みが何処かへ失せてしまった。

毎朝そぞろ歩く行為が馬鹿らしくなって気力が満たない。

こころが億劫となり尻込みする。

鞭を打って奮い起こそうとおのれを叱咤する。

ただでさえ重い足が今日は鉛のようにへばり付く。

三英霊への呪文も此の日は気乗りなし。

 

ただ一つ救われたのはスズメのお宿でかれらの囀りを耳にしたことだ。

何んと云うこころ休まる癒しの音質であったことか。

漸くにしてわれを取り戻した