2022-12-17 老いのひとこと 無断掲載 「最後の忠臣蔵」を見た、とても面白かった。 役所広司の絶妙の名演技にただただ魅了された。 作り話にしろ真実味溢れた綱吉治世下の江戸時代にすっぽりとタイムスリップし思わず息を呑んでしまった。 本懐を遂げた赤穂浪士は自害し果てるが其の中で謎の失踪を遂げる瀬尾孫左衛門と寺坂吉右衛門、此の実在せし両名に内蔵助の落し子、架空の娘可音を交えた三人三様が複雑怪奇に絡み合う人間模様を織り成しながらのドラマは息も付かせぬ展開をみせる。 取り分け、年頃にまで成長した可音の機微に触れる乙女心がストリーの展開に円やかな潤いを加味した。 目を凝らし耳をそばだて真剣に視聴した。 無事に可音を嫁がせ主君より託された使命を果たし得た孫左衛門に待って居たのはやはり潔癖なる武士道に根差した見事なる生き様そのものだった。 逐電の汚名を返上せんと主君の位牌に膝まづき「遅ればせながらわれもお供させて戴きたく候」と腹掻っ捌いた。 急遽駆け付けた朋友吉右衛門に「介錯無用」と告げ刃を首に壮絶なる最期を遂げる。 吉右衛門は孫左衛門の亡骸に「お主こそは最後の赤穂侍じゃ」と男泣きに泣き伏した。 自刃に際し役者役所広司が我が半生を回顧し怒り、恐れ、悲しみ、そして憂い、安らぎ安堵し悦びの心情を悲喜こもごもの内に演技し切って薄っすら笑みを湛えながらの決行であった。 大写しの役者役所広司の表情に圧倒され流石お見事としか言いようがない。 封建遺制の武士道精神は時代を超越し今の世にも確と生きつづけている。