老いのひとこと

農作業雑記

其の一

 

修理はクラッチワイヤーの取り換えで3000円ばかり済んだ。

雨が止んで畑へ参れば又また大西氏が気を利かせて本体の降車を手伝って呉れたではないか。

何から何まで忝い思いが募る。

 

さて一仕事とエンジンをかけクラッチレバーを握るが一向に刃車が動こうとはしないではないか、色々試みるが耕す機能を失ったままエンジン音だけが力なく響く。

其れを察した大西さんが近寄り、こりゃークラッチワイヤーがたるんどる素人じゃ手に負えんと言う。

不誠実極まりない修理屋だがあそこしかない。

大西さんの好意には頭が下がる、再び車に積んでムサシへ直行だ。

駆け込んで極力感情をセーブして穏やかに事情を話せば、今直ぐとは参らぬ一時間待てと言う。

此れには流石に頭にきた、「オッサン此の髭ずらに見覚えが在るだろう、二三日前に修理に出した顧客の顔を忘れましたのかえー」とドスを利かせた。

「年寄りをメトにするな」と叫ぶのは躊躇ったが、少々啖呵を切った所為で直ぐに直して呉れた。

少しばかり興奮したので車から自力で踏ん張り下ろすことが出来た。

「年寄りの馬鹿力」とは余り聞いたことがない。