老いのひとこと

近くのガソリンスタンドで灯油を仕入れる。

電話1本で巡回販売の利便性は百も承知するが此れはどうも好かん。

其の第一は生来のドケチゆえ何よりも経済性を優先する。

第二はボケ防止のため自分でできる事は他人に任せず自分でする。

自動給油機の前に空き缶七個を並べ車との狭い隙間を横向きで右へ体移動を為さんとした折に鼻緒付き草履が路面に吸い付くように縺れてバランスを失いあれよあれよという間に我が体はコンクリート面に軟着地した。

幸い頭部は事無きを得て意識は在るが不自然な体勢で崩れたので伸びてしまった。

起き上がらねばならぬ思うがままならない。

無ザマな格好は嫌だと藻掻いていればJAの従業員が飛んで来て肩を支えて呉れて漸く助かった。

どうも右の肘で頭をガードしたのか肘の辺りの出血を感知した。

冬の長袖にも滲み出たが委細構わず給油を完了させる余裕はあった。

若しも肘関節を直撃し付近の骨に損傷を来たし靭帯を断絶させればそれこそ一大事だった。

本能的に肘頭を防護した身の捌きに我ながら驚きを禁じ得ない。

上腕筋の裂傷で済んで良かった。

しかし此れ紛れもなく老齢(とし)だぜ。

いよいよだぜ。